水中ストロボ MARELUX Apollo III 2.0 Strobe の実力と魅力

最近、MARELUX から発売されているApollo III 2.0 ストロボを2台導入した。その理由は二つあって、一つは今までの水中ストロボの常識を覆す、その驚異的な連射性能。もう一つはハイスピードシンクロ(HSS)撮影ができることだ。その連射性能と特性がどれほどのものか、HSSでどんな撮影が可能になるのか、実際に水中で試してみたので、その結果をご覧いただきたい。

*テスト結果はあくまでApollo III 2.0の場合です。バージョンが異なる場合はさらに性能が高まっている可能性があります。

 MARELUX Apollo III 2.0  with SOFT Dock and Flat Diffuser

MARELUXのApollo III 2.0の連射性能】

連射撮影をした際に、ストロボのリサイクルタイムが間に合わず、撮影結果の4~5枚おきに数枚が真っ黒だったという経験は無いだろうか。
MARELUXのApollo III 2.0は連射モード(MTLモード)時のフル発光値はガイドナンバー22(GN22)になるが、バッテリーがフル充電の状態では試しに連続何コマならコマ落ちせずに撮れるかを試してみた。

連射モード(MTLモード)
目盛はフル発光である12の位置

Apollo III 2.0のダイヤル目盛はフル発光である12の位置。カメラのシャッターモードは、12コマ/秒撮影するキヤノンのメカシャッターを使用。カメラ側のバッテリーも十分ある状態で、高速連続撮影+が表示された状態で撮影した。

【テスト1 - ガイドナンバー22 連続撮影

押し始め、4枚目以降からやや暗くなる傾向があるのが確認できた。その後は一定の安定した明るさを保ちながら、7~11カットおきにランダムに1~2枚程度1/3段くらい暗くなったかなと感じるコマが現れるものの。そのままシャッターを押し続けて、最長連続105コマまでを試した結果、その間に完全に真暗になるカットは一枚も無かった。この程度の変化なら、現像時にほんの少し露出調整するだけで十分に対応できる範囲だろう。

【結果】

実際のフィールドでそのような連射を必要とするシーンがどれだけあるのかはさておき、ガイドナンバー22で、ある程度の明るさを保ちながら発光する性能はすごい。

4カット目から少し落ちるがその後は比較的安定した明るさを保つが、数枚に1~2カットは、1/2段ほど暗くなっているのが確認できる

【テスト2 - ガイドナンバー18 連続撮影】

次に、ダイヤル目盛10の位置(GN約18)ではどうなるかも試してみた。以下の画像がその時の結果だ。105枚の連続撮影。
ダイヤル目盛10の位置
【結果】
その結果は、やはり4枚目ぐらい以降から若干暗くなるのは先ほど(GN22の時)と同じ傾向。しかし、それ以降は目だって露出が変わっている様子はなく、ほぼ平均的に同じ照度で仕上がっているように見える。つまり、ダイヤル目盛10の位置(GN約18)では、ほぼ減光することなく、延々と発光することが分かった。

4枚目以降はやや減光しているように見えるが、それ以降はほぼ安定した明るさで発光が続いている様子が判る

【考察】

この様な連続撮影に十分耐えうるApollo III 2.0なら、決定的瞬間を逃すことは極端に減ると思われる。実際に100コマ以上も連続で撮影する状況は少ないと思われるが、ストロボの限界と特性を把握しておくことで、フィールド撮影時に判断できることはとても大事だ。

それ以外にも、例えばこれまで水中写真では実現が難しかった動きの速い被写体の多重露出撮影なども被写体の条件は限られるかもしれないが、これでようやく可能になることが判る。
EOS R5の高速連続撮影時の最高速度はメカシャッター&電子先幕時:最高12コマ/秒

【18650バッテリー】

このApollo III 2.0の性能を引き出しているのは、Apollo III 2.0に入れる電池が18650と言うリチウムイオン電池(3本)である事と、その中でもごくごく限れた仕様である、放電電流20A以上の18650バッテリーを使っているからだ。私の知る限りこのような仕様の18650はSONY/ MURATA VTC6 3000mAhの一択だけ。
放電電流20A以上の18650バッテリー SONY/ MURATA VTC6 3000mAh

日本ではPSE適合品が2本 3,500円くらいで販売(オフィスエッジ)されている。2025年11月現在

※パッケージを酷似させた偽物も出回っているようなので購入時は注意

手元の18650電池がApollo III 2.0で使えるかどうかは、テストモードのインジケータ色で判断できる。
TESTにした時にLEDインジケータが青く光っていればOKな電池

18650を充電するには、専用の充電器が必要になる。
私が使っているのは、XTAR® VC4SL VC4 Plusそれぞれの充電状態がグラフや数値で把握できる。

【ハイスピードシンクロ撮影】

Apollo III 2.0のもう一つの魅力はハイスピードシンクロ撮影ができること。例えば、水面に近い水域にいる被写体を撮影する際に、背景をぼかしつつも、きらびやかな太陽光を表したい時に有効だ。
明るい水面を煽りながら絞りをf8.0やf5.6にすると、一般的なストロボの同調速度(一般的に1/200秒や1/250秒)を超えたもっと早いシヤッタースピードを使わないと適正な露出になりにくい。また、絞り過ぎてもせっかくの背景の雰囲気が台無しになってしまったり、時には明るい太陽光や水面付近の揺れ等、被写体の速い動きと強烈な太陽光などが影響して、X接点同調スピードの1/250秒では被写体ブレが起きやすかった。

f8 1/5000 ISO500 (M-HSS Mode)
このようなシーンで有効なのが、X接点同調スピードをはるかに超えた撮影が可能になる、ハイスピードシンクロ撮影(HSS)モード。
MARELUXの場合はM-HSSがハイスピードシンクロのモード

ハイスピードシンクロ(HSS)モードは、一般的なストロボの同調速度(一般的に1/200秒や1/250秒)を超えた高速シャッター時にもストロボを同調させる事を可能にした画期的な機能。明るい日中でも絞りを開けて背景をぼかし、動きの速い被写体のブレを抑える撮影が可能になる。これにより、これまではかなり条件が限られていた水面付近でのアオリ撮影にも積極的にチャレンジできるようになった。

HSSを使うにはカメラや光コンバーター、ストロボの全てがHSS対応のものを使う必要がある。

私の場合はカメラとハウジングがCANON EOS R5 / Nauticamで、ハウジング内の光コンバーターはUNDERWATER TECHNICS社のConverter#11052を介してMARELUX Apollo III 2.0 Strobeとシンクロさせている。

【各種設定】

HSSを使用する際は、カメラのシャッターモードは単写。通常とは違ってHSS時はストロボが長時間発光する為、連写が間に合わなくなるので不可。カメラのメニューで、"ストロボの機能設定"でハイスピードに設定する。MARELUX Apollo III 2.0 StrobeはM-HSSモードに。
ストロボの機能設定でハイスピードに設定 M-HSSモード

【撮影機材】

CANON EOS R5 with CANON EF-S35mm F2.8 macro IS STM,
Nauticam Housing with UNDERWATER TECHNICS Converter,
MARELUX Apollo III 2.0 Strobe / dual, (M-HSS Mode)
INON Mega Float Arms and Clamps
Exposure:1/5000; f8.0; ISO500; Manual

コメント

このブログの人気の投稿

OMSのバックフロートタイプのBCシステム